Handmade Life

〜 one tree of Life 〜
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第四話「留年生と写真」

私が学園生活を送る新青学園24組には留年生が一人いる。
今年の春のクラス替えで一緒になったその先輩は誰とも話すことなくいつも教室の端の席で、スマホをいじるか本を読んでいる。留年生と言う言わば『不良的なイメージ』とは随分とかけ離れた存在だけど、結局どちらにせよ話しかけづらい雰囲気をつくったままだった。
「またもっつぁん見てるの?」
腐れ縁の自称親友である千尋が私に話しかけてきた。
「もっつぁん?」
聞きなれない単語を聞き返す私は情報通の千尋に解説を求めた。
「もっつぁんって言うのは本間さんのあだ名。先輩はみんなそう呼んでるらしいよ」
「へえ。なんで?」
「ココカラハ有料ニナリマス。課金シテクダサイ」
急に機械のシステム音みたいな声を発した千尋に「じゃあいいや」とだけ返す。知らない時の常套手段なのはわかってる。
「もっつぁん、か」
本名、本間智。中肉中背で真面目な雰囲気。歳が上だからか落ち着いた空気を持っている人。金髪だとかピアスの穴が何個も空いてるだとかそういういわゆる不良的な要素はどこにも見当たらない。だからこそ、彼がこの教室にいることが不思議で仕方ない。
けれど、その不思議はまったく解消されないまま一学期の期末テストを迎えてしまった。もちろん、本間先輩とは一言も会話をすること無く。それどころかクラスメイトの誰とも一言以上の会話をした姿を見なかった。
 
そして期末テスト二日目。
前日のハンバーガーショップの一件から、千尋と上手く話せずにいた私はテストが終わってすぐに教室を出た。下駄箱から靴を取り出し、履き替えて玄関を出る。空は快晴、でも私の心には名前のつけられないモヤモヤの曇り空。
ふと右側、グラウンドの隅にうずくまってる人影が見えた。
「大丈夫ですか?」
私は体調を崩した人だと思い駆け寄って声をかけた。けれど、そうじゃなかった。そのうずくまった視線の先には一匹の犬。それをスマホで撮影してるだけだった。
「見て。上手く撮れたと思わない?」
その画面を見るより先にその声の主が本間先輩だったことに驚きを隠せなかった。まさか、約3ヶ月もの間同じクラスにいながら話したことない人との第一声がこれだなんて。先輩はいいのだろうか。
「あ、かわいい」
その感情が私のモヤモヤと驚きを一瞬で解消してしまった。写真に映った真っ白な犬は舌を出して、ウインクしたまま笑っているように見えた。
「でしょ。あとこれも」
そう言って猫の写真を見せてくれた。景色から察するに学校の近所だと思う。
「本間先輩は動物が好きなんですか?」
「動物って言うより写真が好きなんだ」
「へえ。だからこんなに素敵な写真が撮れるんですね」
普段、千尋と話してるみたいに言葉がすらすらと出てきた。数分前まで3ヶ月の沈黙があったとは思えないほどに。なんて言うか、心地が良い。
「ごめんね、教室だと話しかけづらかったでしょ?」
「え、そんなこと…」
「そういう風にしてたから。どういう理由でも俺は留年生だからね、関わってもあんまり良いことないし」
そうか。本間先輩はそういう気持ちでクラスメイトと距離をとってたんだ。そう言えば今も画面越しに話しているけど、向かい合って目を合わせているわけじゃない。そう考えているとどうしても聞きたくなってしまった。
「あの…本間先輩が留年した理由って聞いても良いですか?」
「んー…」そう言って間を取った後。
「それはまた今度で」
そう断りを入れて本間先輩は立ち上がった。視線の先にはテスト終わりの学生たちが続々と玄関から出てくる。それを見ると反対方向に歩き出していった。思わす声をかける。
「本間先輩!校門、逆ですよ!」
「こっちに抜け道があるんだ」
さらりと言い放ち、足を踏み出すかと思いきや踵を返して私の前に立った。
「あと本間先輩じゃなくて良いから」
「え?じゃあなんて呼べば…」
「もっつぁん、でいい」
それだけ言うと本間先輩…もっつぁんはまた抜け道があると言う方向に歩いて行った。私は、そこで初めてもっつぁんと目を合わせたのだと気付いた。なにを考えているかわからないようで、それでいて少し寂しそうな瞳だった。
「もっつぁん…ちょっと呼びにくい」
そう独り言を呟くと足元の犬が「ワン!」と相槌をうった。その仕草が可愛くてスマホを取り出し、写真を撮った。
 
テスト二日目の午後。
私は野良猫や野良犬を探しながらゆっくりと家に帰った。
 
※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません
 

| 高田 一樹 | NIIGATA BLUES ss | 01:07 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
第三話「生徒会長と待ち惚け」

「何してる?今日はもう授業は無いぞ」
体育館の扉を背にして窓の外を見上げていた私はその一言でビクッとした。怒られると思い、恐る恐る声のほうへと視線を送ると予想とは違いそこに先生の姿はなかった。代わりに立っていたのは、新青学園の制服を来た生徒。
「あ、あの…」
「なんだ?」
「生徒会長ですよね?」
そう、彼は生徒会長なのだ。何度も全校集会で話しているのを見たことがある。確か、32組の高田一樹…さん。180近い身長に一切無駄な肉のない細身の体がより一層、背を高く見せる。親もこの学園のPTA会長をしていて、その二人がそれぞれ話す全校集会は『高田劇場』と呼ばれている。
「そうだけど、何か質問がある?」
第一声とは印象が違う、少しやわらかな言い方で返される。それに戸惑いながら言葉に困る。
「サインでもしようか?」
え?ええ?サイン?なんで?全然予想のつかない展開に私は戸惑いのどつぼにはまっていった。硬直している私の手からタオルを取ると自前の油性ペンでさらさらと、生徒会長はサインを書いた。
「はい」
「あ、ありがとうございます」
なぜか雰囲気にのまれてお礼を言ってしまった。そのまま生徒会長は「じゃ、また」と言い体育館のドアを開けた。
そこには内藤くんがバスケットの練習をしている姿が見えたけど、硬直している私に閉じていくドアを止める術はなかった。
けれど、ドリブルの音が鮮明に聞こえたように二人の会話が聞こえてくる。
「あ、一樹さん。なんスか?」
「陽介。部活は明日からだ」
「いいじゃないっすか。もう三日もバスケしてなくて、うずうずして死にそうなんですよ」
「どっかの漫画みたいな言い訳するな」
体育館の中では楽しそうな会話のやりとり。生徒会長はああいう風に人と会話するんだ。なんか変な感じ、いつもステージの上で行儀よく話す姿しか知らなかった。でも、どうして内藤くんと仲良いんだろう。学年も違うのに、名前で呼び合ってる。
「で、誰と話してたんですか?」
「聞こえてたのか?」
私はまたビクッとした。このままだと紛れもなく私の話になる。
「…ファンだ」
「ええ?」
気恥ずかしくなって身を隠そうとした私にまたしても予想外の言葉が突き刺さり、思わず声をあげてしまった。
「またッスか。モテモテですね、生徒会長様は」
「まあ、な」
「謙遜しないんかーい!」
内藤くんのツッコミが静かな体育館に響き渡る。その大きな声量は私の分までツッコミを入れてくれたに違いない。しかし、それには全く動じずに生徒会長は内藤くんに「とにかくもう帰れ」と言い放ちドアを開けた。そしてドアの前にいる硬直したままの私と目が合う。
「まだいたのか」
そう言う生徒会長の後ろから内藤くんが私に気付いた。
「おお!昨日はありがとな」
その一言で私の硬直はやっと解けてくれた。「いえ、こちらこそ…」生徒会長を挟んで内藤くんに返事をする。そこで内藤くんは勝手に納得したような仕草を見せて言った。
「一樹さんのファンだったんだな」
「え?いや…」そう否定しようとして視界の端に本人が写ってしまった。否定しきれずにいると内藤くんは続けた。
「俺もう帰るからさ、玄関で待っててよ。一樹さん、片付けしてくるんで彼女玄関まで送ってあげてください」
「なんで俺が」「一樹さんのファンなんでしょ?その子」生徒会長の言葉を遮って彼は言った。しかもウインクつきで。
ダムダムと軽いドリブルをしながら用具室に向かっていく内藤くんを背中に生徒会長は「行くぞ」と玄関に向かって歩き始めた。
「でも、ちょっとだけ待ったら内藤くん戻ってきますよ?」
「それだと俺が怒られる」
足早に歩く生徒会長を追いかけながら質問すると思ってもいない答えが返ってきた。この人と会話すると意外過ぎてリアクションに困ると言うことだけはこの十数分で理解した。
「もしかして、怖いんですか?」
「うるさい」
内藤くんがいじったように茶化してしまった私に真面目に返答する生徒会長。玄関にはあっという間に着いた。私はたくさんの疑問の中から一つだけ選んで質問した。
「内藤くんとはどういう関係なんですか?」
「陽介が気になるのか?」
「いえ、そんなんじゃないですけど」
そうだった…。この人は質問に質問で返してくる人だった。最初に聞いた時もそうだった。でもなんか見透かされたようで少し怖い。
ちょっとした間の後すぐに生徒会長の後ろから内藤くんが走ってくるのが見えた。その方向へ歩き出そうとしたその時、聞き覚えのない女子の声が私の後ろから彼に向かって発せられた。
「陽ちゃん!遅い!」
まったく予想してなかった方向からの声に振り返ると、私の横を通り過ぎる茶色い髪だけが目に映った。
「あれ?今日一緒に帰るって言ってたっけ?」
「えー、言ったじゃん」
「あ、そっか。悪い」
茶色い髪の女子を目で追うだけで精一杯の私に向かって、数メートル先で「ごめん」と口パクして左手を上げる内藤くんは下駄箱の影に消えていった。どうしたって気まずい空気が流れる中、生徒会長は小さな声で沈黙を破った。
「安い香水だな」
「え?」
「さて。帰るか」
そう言うと生徒会長は3年生の下駄箱から自分の靴を取り出し、上履きから履き替えた。そして、トントンとつま先を地面に当てながら「帰らないのか?…この学校、出るぞ」と、軽い冗談みたいに言ってみせた。
私は脅されたように靴を履き替え、生徒会長の後ろを歩いた。沈んだ気持ちを表すかのように外は赤から紫へと変わっていった。
「さっきの質問の答えは…また今度話そう」
私の心を気遣った生徒会長の優しい言葉に、私は静かに頷いた。
 
※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません
 

| 高田 一樹 | NIIGATA BLUES ss | 01:06 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
第二話「腐れ縁とハンバーガー」

「おっはよー」
陽気な声が私に向かって飛んできた。
声の主は山岸仁美。この新青学園24組のクラスメイトで、一言で言えば私の親友と言う肩書きの女子。活発な元気っ子でおしゃれと遊びは大得意だけど勉強はからっきし。対する私は全科目中の上くらいの地味でも派手でもない普通女子。苦手なものは虫と雷…それから自己紹介。
 
「またふさぎこんじゃって。悩み事?あるなら聞くよ?」
「いいってば…」
「そんなこと言わないで。親友じゃん」
「大丈夫」
そこまで話して私は目の前にいる人物が仁美ではないことに気がついた。
「えー!なに驚いちゃってるんだよ!」
そりゃ驚く。親友だと思って話してたら、ただの腐れ縁の幼馴染だったんだから。私に驚かれたことが気に食わないようで彼はぶつぶつ言いながら自分の席に座った。と、言っても机越しから隣の席に移動しただけだけど。
「そうか…俺は親友じゃないのか」
あからさまにこちらをチラチラ見ながら否定されるのを待っている彼の名前は、熊谷千尋。
ちょっぴり濃い目の顔に喜怒哀楽のオーバーリアクションはどこかの芸人のようで、本人もそう言われるのを喜んでいる。有名人や先生のモノマネが上手いと言うどこの高校にも一人は居るであろう人気者だ。そしてなにより人脈が広い。
千尋とは幼稚園、小学校から付き合いだけど彼の親の仕事の都合で中学校だけは別だった。この新青学園に入学した時に再会して、うっかり抱き合って「久しぶり!」なんて言ってしまったもんだから恋人疑惑を晴らすのが大変だったのを思い出す。
「はいはい。親友ってことにしてていいよ」
彼はニカッっと笑うと「よーし!じゃあ今日のテスト張り切っていってみよー!…って今日テストじゃん!」と大声で叫んだ。クラス中から「うるせーぞ、千尋!」と言う声と共に笑い声が飛んでくる。
「やべえ…全然勉強してない…」
今度はガタガタと震えだした。もちろんパフォーマンスだけど、こういう浮き沈みの激しさが彼の魅力…なのかもしれない。
「私も勉強してないよ、大丈夫」
「お前のはあれだろ。マラソン大会で一緒に走ろうねって言って置いていくパターンのやつだろ…」
ばれた。自分でも慰めになってない言葉を投げかけたの即カウンターで返された。私だって中の上から脱出したい。そもそもテスト前に勉強してない方が悪い。
「一夜漬けならぬ、五分漬けを使う時が来てしまったようだ」
千尋はそう言うと「奥義!」とかなんとか言いながら次の科目の教科書を開いた。
「…で、テスト範囲は?」
「それもわかんないの?85ページから…」
―ガラガラ―。
千尋の奥義『五分漬け』は無残にも発動前に先生によって打ち消されてしまった。
「この薄情者!」そう口にしながら教科書を閉じた。
 
―テスト初日の放課後。
抜け殻と化した隣の席の千尋。それをチラチラと横目で見ていると仁美が歩み寄ってきた。
「ね、何か食べて帰らない?」
「いいね。何にする?」
「ハンバーガー…」
なぜか隣の席の屍から意見が聞こえてきた。仁美と二人でそれを見ると「ハンバーガーでも食わなきゃあと二日乗り切れる気がしない」と言う無機質な声で千尋が口をパクパクとさせている。
「じゃあハンバーガーに決定!千尋くんも行こうよ」
私が千尋を戒めようとするやいなや、仁美の発言により三人でハンバーガーを食べに行くことになった。いや、なってしまった。
道中、意気揚々と歩く仁美とハンバーガーの一言で息を吹き返した千尋が大手を振って歩く。
席に着けば仁美のガールズトークにノリノリで参加してくる千尋。仁美が「何年何組の男子はイケてる」と言うと「彼は彼女がいるよ、もう3ヶ月目」とかどこから仕入れているのかわからない情報をすらすらと答える千尋。私には会話のタイミングが掴めない速度で会話が展開されていく。でも、それを聞いてるだけでも充分楽しめた。
「あ、ごめん。そろそろバイトの時間」
2時間ほど話したところでそう言って仁美は席を立った。
「テスト期間なのに?」
呼び止めるつもりじゃなくて、疑問として投げかけた私に「みんながそうやって休んじゃうからね」と言う仁美。なんだかんだで面倒見がいい。きっと千尋のことも最初から呼ぶつもりで私に話しかけたんだろう。
「千尋くん、楽しかったよ。またお話しようね!」
相変わらず元気なまま店を出て行った仁美を見送った千尋は、振り返るといつになく真面目な顔をしていた。
「どうしたの?」
さっきまでのハイスピードな会話の展開からは信じられないほどゆっくりと間をあけて千尋は言った。
「仁美さんって…彼氏いるの?」
「いないと思う。そんな話聞いたことないし」
「じゃあ…告白しようかな」
「え?」
声が出てしまった。千尋が仁美をそんな風に見てたなんて考えもしてなかったから。そっか、千尋は仁美のことが好きなのか。
「冗談!彼氏がいたらこんなとこで話してるの見られて嫉妬されたりしたら面倒じゃん?」
…あれ?なんで今冗談にしたの?もしかして私、変な顔してたのかな。だとしたら千尋はなにか勘違いしちゃったかもしれない。別に私は千尋のこと、なんとも思ってない…わけじゃない、かもしれないけど!
頭の中でたくさんの私が一斉に話しだした。その中でなにか話さなきゃって言う私が一言だけ「そうだね」と言った。
「…よし、帰るかー」
なんとなく脱力した声を出しながら立ち上がった千尋と一緒に家まで歩いた。私も千尋も口数がいつもの半分。
家の前まで送ってもらったお礼を言い、部屋に戻る私。明日のテストの予習を始める為に教科書を開いた。
けど、私の頭の中は千尋と仁美の楽しそうな様子でいっぱいだった。
 
※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません
 

| 高田 一樹 | NIIGATA BLUES ss | 01:04 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
第一話「雨の匂いとスポーツタオル」

放課後―。
真っ青な空が赤く染まり始める頃。
私は普段の自分のイメージとはかけ離れたタオルを手に体育館へと続く渡り廊下を進んでいた。
少しずつ革のボールが床に叩きつけられる音が近くなってくる。
時折リズムが変わり、ボールがゴールのネットを通る音が聞こえてくる。足音の数から察するときっと一人。
それを確信すると思わず頬が緩んでしまった。でも、この体育館の扉を開ける勇気が出てこない。
私は無駄な期待をしながら窓の外から空を眺めた。
「雨…降らないかな」

前日。期末テストの最終日。
テスト勉強の煩わしさから解放された清々しさと、その割に自信を持てないテストの回答をしてしまった憂鬱さが混同する落ち着かない午後。外から聞こえる雨音は憂鬱のほうを後押ししていた。
「あーあ…雨かぁ」
クラスメイトの山岸仁美が帰り支度をしながら呟く。
「ねえ、傘持ってない?」
呟きをスルーした私に仁美は聞いてきた。
「折りたたみなら持ってるけど。仁美、家逆じゃん」
「わかってるって。2個持ってない?って意味」
持ってるわけがない。そもそも今日は天気予報だって晴れだったんだから。首を横に振る私に「だよね」と返す仁美。
「ま、いっか。予報も晴れだったんだし、ちょっと待ったら晴れるよね」
どこにも根拠のない予想を口にしながら、私に手を振り仁美は教室を出て行った。私は机の上に出しっぱなしだった筆記用具をしまい、鞄を持ち上げた。
「あれ?一人?」
教室の入口から仁美とは別の声が私に話しかけてきた。
その声の主は内藤陽介。仁美と幼馴染でバスケ部のエース。背はそこまで高くないけどジャンプ力がすごくて、10cm以上も身長がある相手のシュートも簡単にブロックする…らしい。
「仁美とは一緒に帰らねえの?」
さっきの質問に答える前に内藤くんはもう一つ質問を続けてきた。
「うん。雨だし…家、逆だし」
「あ、そっか」
「内藤くんは?部活行かなくていいの?」
「今日テストだったから無し」
そりゃそうだ。解りきってるけど、そんな当たり前のことでも聞かなきゃ間が持たない。二人っきりで会話をするのはこれが初めてだ。いつもは私と内藤くんの間に仁美がいた。内藤くんとはクラスも違う。
「なあ。頼みがあるんだけど…」
彼はそんな私の同様をよそにいつも三人でいる調子で話してくる。
「なに?」
「傘持ってない?」
「…折りたたみなら」
「2個?」
幼馴染だからなのか、仁美と全く同じことを聞いてきた。私はそれがおかしくて、うっかり笑顔で答えてしまった。
「んなわけないじゃん」
無意識に口から出た言葉に驚く間もなく、それよりももっと驚く答えが返ってきた。
「じゃ、一緒に帰ろうぜ」
「えっ?」
今度は声に出して驚いてしまった。でも仁美と幼馴染ってことは内藤くんの家も私とは逆方向だし、あと、雨だし…あ、雨だからこういう事態になってるのか…なんて小さなパニックを起こしているのを見透かされたのか、彼は颯爽と歩き出した。
「ほら、帰るぞ。早くしないと兄貴に漫画読まれちまう」
「え?漫画?」
「新刊発売日なんだよ、今日。ネットで注文したからもう届いてんの」
聞き出したい答えじゃないことが次から次へと返ってくる。呼び止めようにも彼はすたすたと教室を出て行く。廊下を歩いて階段を下りて、玄関を出た。さすがバスケ部のエースなだけあってついていくのがやっとだ。
どこだったかの有名なメーカーのバスケットシューズに履き替えて、振り返った内藤くんは手を差し出した。
「ほら、貸して」
私は促されるままにごそごそと折りたたみ傘を鞄から取り出した。
「サンキュ」
そういうと彼は手馴れた様子で傘を開き「小さっ」と呟き、そのまま「まあいいか」と続けた。家を出た時の快晴が嘘のようなどしゃ降り。きっと一人で差しても濡れてしまうであろう小さな傘に二人で入り、家までの道を歩いた。
十分くらいだろうか。小さな声ならかき消されてしまう雨音に負けない声量で内藤くんといろんな話をした。会話の相槌が自分なりにしっくり来ていた頃、彼の家の前に着いた。
「あ、ここが俺の家。ありがとな」
そう言って内藤くんは別れを惜しむ間も無く家に入っていった。あまりの早さにちょっとだけへこんだ。そしてへこんだ自覚に疑問を持った。この一連の流れは傘の外から見たら呆然と立ち尽くしているだけの女子だ。
ほんの1、2分だった。閉まったと思ったドアから内藤くんはスポーツタオルを持って出てきた。
「まだ兄貴帰ってきてなかったわ…あと、これ」
内藤くんは手にしたタオルを差し出して、私の左肩を指さした。
「悪い。一緒じゃなかったら濡れなくて済んだもんな」
「別にいいのに」
「良くない」
そう言うと彼は私の左肩にタオルをかけた。濡れた制服の上のタオル越しに触れた内藤くんの手はやっぱり大きかった。
「じゃ、じゃあ洗って返すね」
「うん、頼む。それ一番のお気に入りだから」
一番のお気に入り…?なんでそれを私に貸そうと思ったんだろ?
「んじゃ、また明日な」
そう言うと彼は私に背を向けて玄関へ向かった。ドアに手をかけた彼の右肩は私の左肩よりもずっと濡れていた。
「傘…貸してあげれば良かったな」
無意識の内に呟いた一言は雨音にかき消され、私は左肩のタオルを両肩にかけ直した。途端にふわりと内藤くんの匂いがした。彼の印象とは遠くかけ離れた雨。その匂いと混ざった彼の香りはいつの間にかテスト終わりの憂鬱さを吹き飛ばしていた…。

※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

| 高田 一樹 | NIIGATA BLUES ss | 01:02 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
要望が多かった「NIIGATA BLUES HIGH SCHOOL LIFE」を執筆したよ!
大々的に発表しようと思ったらそもそも俺はNIIGATA BLUESについて何一つ書いていないのではないか!?

高田一樹は演劇において所属は基本的に無いのですが、いろいろなところのメンバーでもあります。
まずはJOKER。それからedge bronx theater。剣舞においては剣舞道峰精館。
そして昨年11月に自称イケメンアイドルコント集団として結成された「NIIGATA BLUES」です!
細かいことはメンバーのリーダー、通称チヒロブルースのブログにて書いてあるのでそちらをご覧下さい!
http://blog.goo.ne.jp/1000hirorevolution

そして「アイドルと名乗るからにはアイドルの歌を歌って踊ろう」と言うことで各方面の方々にお願いしていろいろな無茶をやらせていただきました!
その無茶が伝わったのか、今まで演劇を見たことない人にも知っていただくことができました。
非公式ではありますが、動画をUPしてくれた方がいらっしゃるのでありがたくリンクを貼らせていただきます。
 

NIIGATA BLUES(劇団+歌)/N-Art communication 2013/新潟市万代市民会館

http://youtu.be/sIaRCthDOX4

このメンバーのノリは普通に楽しくてまあ、いわゆる男子校みたいなノリなわけです。
各自いろいろな公演のスケジュールの合間を縫って稽古したり闇練したりで。
本番直前には死を覚悟して舞台に上がったりで、Twitterでもよく絡んだり、NIIGATABLUESから演劇を知ったって人もいました。
そんなファンの要望の一つが「NIIGATA BLUESの学園パロディが観たい」でして。
舞台でやるのは不可能に近いので小説として、執筆してみました。

お祝いのお返しみたいなものですね(笑)

もちろんフィクションです。

これがメンバー!顔を思い浮かべながら読むと楽しさ倍増…かもしれません!

| 高田 一樹 | NIIGATA BLUES ss | 00:55 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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110715_1447541.jpg
地元新潟で演劇活動などを行う人。


峰精流剣舞道峰精館所属。
雅号は高田壱峰(いっぽう)
師範なのを良いことにやりたい放題する。

殺陣教室!!
高田劇剣術道場

詳細はこちら
綺麗なお姉さんと心理学が好き。
モテたい。

twitter@sir_kz その他詳細は下のPROFILE欄でご確認ください。


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