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第一話「雨の匂いとスポーツタオル」

放課後―。
真っ青な空が赤く染まり始める頃。
私は普段の自分のイメージとはかけ離れたタオルを手に体育館へと続く渡り廊下を進んでいた。
少しずつ革のボールが床に叩きつけられる音が近くなってくる。
時折リズムが変わり、ボールがゴールのネットを通る音が聞こえてくる。足音の数から察するときっと一人。
それを確信すると思わず頬が緩んでしまった。でも、この体育館の扉を開ける勇気が出てこない。
私は無駄な期待をしながら窓の外から空を眺めた。
「雨…降らないかな」

前日。期末テストの最終日。
テスト勉強の煩わしさから解放された清々しさと、その割に自信を持てないテストの回答をしてしまった憂鬱さが混同する落ち着かない午後。外から聞こえる雨音は憂鬱のほうを後押ししていた。
「あーあ…雨かぁ」
クラスメイトの山岸仁美が帰り支度をしながら呟く。
「ねえ、傘持ってない?」
呟きをスルーした私に仁美は聞いてきた。
「折りたたみなら持ってるけど。仁美、家逆じゃん」
「わかってるって。2個持ってない?って意味」
持ってるわけがない。そもそも今日は天気予報だって晴れだったんだから。首を横に振る私に「だよね」と返す仁美。
「ま、いっか。予報も晴れだったんだし、ちょっと待ったら晴れるよね」
どこにも根拠のない予想を口にしながら、私に手を振り仁美は教室を出て行った。私は机の上に出しっぱなしだった筆記用具をしまい、鞄を持ち上げた。
「あれ?一人?」
教室の入口から仁美とは別の声が私に話しかけてきた。
その声の主は内藤陽介。仁美と幼馴染でバスケ部のエース。背はそこまで高くないけどジャンプ力がすごくて、10cm以上も身長がある相手のシュートも簡単にブロックする…らしい。
「仁美とは一緒に帰らねえの?」
さっきの質問に答える前に内藤くんはもう一つ質問を続けてきた。
「うん。雨だし…家、逆だし」
「あ、そっか」
「内藤くんは?部活行かなくていいの?」
「今日テストだったから無し」
そりゃそうだ。解りきってるけど、そんな当たり前のことでも聞かなきゃ間が持たない。二人っきりで会話をするのはこれが初めてだ。いつもは私と内藤くんの間に仁美がいた。内藤くんとはクラスも違う。
「なあ。頼みがあるんだけど…」
彼はそんな私の同様をよそにいつも三人でいる調子で話してくる。
「なに?」
「傘持ってない?」
「…折りたたみなら」
「2個?」
幼馴染だからなのか、仁美と全く同じことを聞いてきた。私はそれがおかしくて、うっかり笑顔で答えてしまった。
「んなわけないじゃん」
無意識に口から出た言葉に驚く間もなく、それよりももっと驚く答えが返ってきた。
「じゃ、一緒に帰ろうぜ」
「えっ?」
今度は声に出して驚いてしまった。でも仁美と幼馴染ってことは内藤くんの家も私とは逆方向だし、あと、雨だし…あ、雨だからこういう事態になってるのか…なんて小さなパニックを起こしているのを見透かされたのか、彼は颯爽と歩き出した。
「ほら、帰るぞ。早くしないと兄貴に漫画読まれちまう」
「え?漫画?」
「新刊発売日なんだよ、今日。ネットで注文したからもう届いてんの」
聞き出したい答えじゃないことが次から次へと返ってくる。呼び止めようにも彼はすたすたと教室を出て行く。廊下を歩いて階段を下りて、玄関を出た。さすがバスケ部のエースなだけあってついていくのがやっとだ。
どこだったかの有名なメーカーのバスケットシューズに履き替えて、振り返った内藤くんは手を差し出した。
「ほら、貸して」
私は促されるままにごそごそと折りたたみ傘を鞄から取り出した。
「サンキュ」
そういうと彼は手馴れた様子で傘を開き「小さっ」と呟き、そのまま「まあいいか」と続けた。家を出た時の快晴が嘘のようなどしゃ降り。きっと一人で差しても濡れてしまうであろう小さな傘に二人で入り、家までの道を歩いた。
十分くらいだろうか。小さな声ならかき消されてしまう雨音に負けない声量で内藤くんといろんな話をした。会話の相槌が自分なりにしっくり来ていた頃、彼の家の前に着いた。
「あ、ここが俺の家。ありがとな」
そう言って内藤くんは別れを惜しむ間も無く家に入っていった。あまりの早さにちょっとだけへこんだ。そしてへこんだ自覚に疑問を持った。この一連の流れは傘の外から見たら呆然と立ち尽くしているだけの女子だ。
ほんの1、2分だった。閉まったと思ったドアから内藤くんはスポーツタオルを持って出てきた。
「まだ兄貴帰ってきてなかったわ…あと、これ」
内藤くんは手にしたタオルを差し出して、私の左肩を指さした。
「悪い。一緒じゃなかったら濡れなくて済んだもんな」
「別にいいのに」
「良くない」
そう言うと彼は私の左肩にタオルをかけた。濡れた制服の上のタオル越しに触れた内藤くんの手はやっぱり大きかった。
「じゃ、じゃあ洗って返すね」
「うん、頼む。それ一番のお気に入りだから」
一番のお気に入り…?なんでそれを私に貸そうと思ったんだろ?
「んじゃ、また明日な」
そう言うと彼は私に背を向けて玄関へ向かった。ドアに手をかけた彼の右肩は私の左肩よりもずっと濡れていた。
「傘…貸してあげれば良かったな」
無意識の内に呟いた一言は雨音にかき消され、私は左肩のタオルを両肩にかけ直した。途端にふわりと内藤くんの匂いがした。彼の印象とは遠くかけ離れた雨。その匂いと混ざった彼の香りはいつの間にかテスト終わりの憂鬱さを吹き飛ばしていた…。

※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

| 高田 一樹 | NIIGATA BLUES ss | 01:02 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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地元新潟で演劇活動などを行う人。


峰精流剣舞道峰精館所属。
雅号は高田壱峰(いっぽう)
師範なのを良いことにやりたい放題する。

殺陣教室!!
高田劇剣術道場

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綺麗なお姉さんと心理学が好き。
モテたい。

twitter@sir_kz その他詳細は下のPROFILE欄でご確認ください。


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