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〜 one tree of Life 〜
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第二話「腐れ縁とハンバーガー」

「おっはよー」
陽気な声が私に向かって飛んできた。
声の主は山岸仁美。この新青学園24組のクラスメイトで、一言で言えば私の親友と言う肩書きの女子。活発な元気っ子でおしゃれと遊びは大得意だけど勉強はからっきし。対する私は全科目中の上くらいの地味でも派手でもない普通女子。苦手なものは虫と雷…それから自己紹介。
 
「またふさぎこんじゃって。悩み事?あるなら聞くよ?」
「いいってば…」
「そんなこと言わないで。親友じゃん」
「大丈夫」
そこまで話して私は目の前にいる人物が仁美ではないことに気がついた。
「えー!なに驚いちゃってるんだよ!」
そりゃ驚く。親友だと思って話してたら、ただの腐れ縁の幼馴染だったんだから。私に驚かれたことが気に食わないようで彼はぶつぶつ言いながら自分の席に座った。と、言っても机越しから隣の席に移動しただけだけど。
「そうか…俺は親友じゃないのか」
あからさまにこちらをチラチラ見ながら否定されるのを待っている彼の名前は、熊谷千尋。
ちょっぴり濃い目の顔に喜怒哀楽のオーバーリアクションはどこかの芸人のようで、本人もそう言われるのを喜んでいる。有名人や先生のモノマネが上手いと言うどこの高校にも一人は居るであろう人気者だ。そしてなにより人脈が広い。
千尋とは幼稚園、小学校から付き合いだけど彼の親の仕事の都合で中学校だけは別だった。この新青学園に入学した時に再会して、うっかり抱き合って「久しぶり!」なんて言ってしまったもんだから恋人疑惑を晴らすのが大変だったのを思い出す。
「はいはい。親友ってことにしてていいよ」
彼はニカッっと笑うと「よーし!じゃあ今日のテスト張り切っていってみよー!…って今日テストじゃん!」と大声で叫んだ。クラス中から「うるせーぞ、千尋!」と言う声と共に笑い声が飛んでくる。
「やべえ…全然勉強してない…」
今度はガタガタと震えだした。もちろんパフォーマンスだけど、こういう浮き沈みの激しさが彼の魅力…なのかもしれない。
「私も勉強してないよ、大丈夫」
「お前のはあれだろ。マラソン大会で一緒に走ろうねって言って置いていくパターンのやつだろ…」
ばれた。自分でも慰めになってない言葉を投げかけたの即カウンターで返された。私だって中の上から脱出したい。そもそもテスト前に勉強してない方が悪い。
「一夜漬けならぬ、五分漬けを使う時が来てしまったようだ」
千尋はそう言うと「奥義!」とかなんとか言いながら次の科目の教科書を開いた。
「…で、テスト範囲は?」
「それもわかんないの?85ページから…」
―ガラガラ―。
千尋の奥義『五分漬け』は無残にも発動前に先生によって打ち消されてしまった。
「この薄情者!」そう口にしながら教科書を閉じた。
 
―テスト初日の放課後。
抜け殻と化した隣の席の千尋。それをチラチラと横目で見ていると仁美が歩み寄ってきた。
「ね、何か食べて帰らない?」
「いいね。何にする?」
「ハンバーガー…」
なぜか隣の席の屍から意見が聞こえてきた。仁美と二人でそれを見ると「ハンバーガーでも食わなきゃあと二日乗り切れる気がしない」と言う無機質な声で千尋が口をパクパクとさせている。
「じゃあハンバーガーに決定!千尋くんも行こうよ」
私が千尋を戒めようとするやいなや、仁美の発言により三人でハンバーガーを食べに行くことになった。いや、なってしまった。
道中、意気揚々と歩く仁美とハンバーガーの一言で息を吹き返した千尋が大手を振って歩く。
席に着けば仁美のガールズトークにノリノリで参加してくる千尋。仁美が「何年何組の男子はイケてる」と言うと「彼は彼女がいるよ、もう3ヶ月目」とかどこから仕入れているのかわからない情報をすらすらと答える千尋。私には会話のタイミングが掴めない速度で会話が展開されていく。でも、それを聞いてるだけでも充分楽しめた。
「あ、ごめん。そろそろバイトの時間」
2時間ほど話したところでそう言って仁美は席を立った。
「テスト期間なのに?」
呼び止めるつもりじゃなくて、疑問として投げかけた私に「みんながそうやって休んじゃうからね」と言う仁美。なんだかんだで面倒見がいい。きっと千尋のことも最初から呼ぶつもりで私に話しかけたんだろう。
「千尋くん、楽しかったよ。またお話しようね!」
相変わらず元気なまま店を出て行った仁美を見送った千尋は、振り返るといつになく真面目な顔をしていた。
「どうしたの?」
さっきまでのハイスピードな会話の展開からは信じられないほどゆっくりと間をあけて千尋は言った。
「仁美さんって…彼氏いるの?」
「いないと思う。そんな話聞いたことないし」
「じゃあ…告白しようかな」
「え?」
声が出てしまった。千尋が仁美をそんな風に見てたなんて考えもしてなかったから。そっか、千尋は仁美のことが好きなのか。
「冗談!彼氏がいたらこんなとこで話してるの見られて嫉妬されたりしたら面倒じゃん?」
…あれ?なんで今冗談にしたの?もしかして私、変な顔してたのかな。だとしたら千尋はなにか勘違いしちゃったかもしれない。別に私は千尋のこと、なんとも思ってない…わけじゃない、かもしれないけど!
頭の中でたくさんの私が一斉に話しだした。その中でなにか話さなきゃって言う私が一言だけ「そうだね」と言った。
「…よし、帰るかー」
なんとなく脱力した声を出しながら立ち上がった千尋と一緒に家まで歩いた。私も千尋も口数がいつもの半分。
家の前まで送ってもらったお礼を言い、部屋に戻る私。明日のテストの予習を始める為に教科書を開いた。
けど、私の頭の中は千尋と仁美の楽しそうな様子でいっぱいだった。
 
※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません
 

| 高田 一樹 | NIIGATA BLUES ss | 01:04 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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地元新潟で演劇活動などを行う人。


峰精流剣舞道峰精館所属。
雅号は高田壱峰(いっぽう)
師範なのを良いことにやりたい放題する。

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