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第三話「生徒会長と待ち惚け」

「何してる?今日はもう授業は無いぞ」
体育館の扉を背にして窓の外を見上げていた私はその一言でビクッとした。怒られると思い、恐る恐る声のほうへと視線を送ると予想とは違いそこに先生の姿はなかった。代わりに立っていたのは、新青学園の制服を来た生徒。
「あ、あの…」
「なんだ?」
「生徒会長ですよね?」
そう、彼は生徒会長なのだ。何度も全校集会で話しているのを見たことがある。確か、32組の高田一樹…さん。180近い身長に一切無駄な肉のない細身の体がより一層、背を高く見せる。親もこの学園のPTA会長をしていて、その二人がそれぞれ話す全校集会は『高田劇場』と呼ばれている。
「そうだけど、何か質問がある?」
第一声とは印象が違う、少しやわらかな言い方で返される。それに戸惑いながら言葉に困る。
「サインでもしようか?」
え?ええ?サイン?なんで?全然予想のつかない展開に私は戸惑いのどつぼにはまっていった。硬直している私の手からタオルを取ると自前の油性ペンでさらさらと、生徒会長はサインを書いた。
「はい」
「あ、ありがとうございます」
なぜか雰囲気にのまれてお礼を言ってしまった。そのまま生徒会長は「じゃ、また」と言い体育館のドアを開けた。
そこには内藤くんがバスケットの練習をしている姿が見えたけど、硬直している私に閉じていくドアを止める術はなかった。
けれど、ドリブルの音が鮮明に聞こえたように二人の会話が聞こえてくる。
「あ、一樹さん。なんスか?」
「陽介。部活は明日からだ」
「いいじゃないっすか。もう三日もバスケしてなくて、うずうずして死にそうなんですよ」
「どっかの漫画みたいな言い訳するな」
体育館の中では楽しそうな会話のやりとり。生徒会長はああいう風に人と会話するんだ。なんか変な感じ、いつもステージの上で行儀よく話す姿しか知らなかった。でも、どうして内藤くんと仲良いんだろう。学年も違うのに、名前で呼び合ってる。
「で、誰と話してたんですか?」
「聞こえてたのか?」
私はまたビクッとした。このままだと紛れもなく私の話になる。
「…ファンだ」
「ええ?」
気恥ずかしくなって身を隠そうとした私にまたしても予想外の言葉が突き刺さり、思わず声をあげてしまった。
「またッスか。モテモテですね、生徒会長様は」
「まあ、な」
「謙遜しないんかーい!」
内藤くんのツッコミが静かな体育館に響き渡る。その大きな声量は私の分までツッコミを入れてくれたに違いない。しかし、それには全く動じずに生徒会長は内藤くんに「とにかくもう帰れ」と言い放ちドアを開けた。そしてドアの前にいる硬直したままの私と目が合う。
「まだいたのか」
そう言う生徒会長の後ろから内藤くんが私に気付いた。
「おお!昨日はありがとな」
その一言で私の硬直はやっと解けてくれた。「いえ、こちらこそ…」生徒会長を挟んで内藤くんに返事をする。そこで内藤くんは勝手に納得したような仕草を見せて言った。
「一樹さんのファンだったんだな」
「え?いや…」そう否定しようとして視界の端に本人が写ってしまった。否定しきれずにいると内藤くんは続けた。
「俺もう帰るからさ、玄関で待っててよ。一樹さん、片付けしてくるんで彼女玄関まで送ってあげてください」
「なんで俺が」「一樹さんのファンなんでしょ?その子」生徒会長の言葉を遮って彼は言った。しかもウインクつきで。
ダムダムと軽いドリブルをしながら用具室に向かっていく内藤くんを背中に生徒会長は「行くぞ」と玄関に向かって歩き始めた。
「でも、ちょっとだけ待ったら内藤くん戻ってきますよ?」
「それだと俺が怒られる」
足早に歩く生徒会長を追いかけながら質問すると思ってもいない答えが返ってきた。この人と会話すると意外過ぎてリアクションに困ると言うことだけはこの十数分で理解した。
「もしかして、怖いんですか?」
「うるさい」
内藤くんがいじったように茶化してしまった私に真面目に返答する生徒会長。玄関にはあっという間に着いた。私はたくさんの疑問の中から一つだけ選んで質問した。
「内藤くんとはどういう関係なんですか?」
「陽介が気になるのか?」
「いえ、そんなんじゃないですけど」
そうだった…。この人は質問に質問で返してくる人だった。最初に聞いた時もそうだった。でもなんか見透かされたようで少し怖い。
ちょっとした間の後すぐに生徒会長の後ろから内藤くんが走ってくるのが見えた。その方向へ歩き出そうとしたその時、聞き覚えのない女子の声が私の後ろから彼に向かって発せられた。
「陽ちゃん!遅い!」
まったく予想してなかった方向からの声に振り返ると、私の横を通り過ぎる茶色い髪だけが目に映った。
「あれ?今日一緒に帰るって言ってたっけ?」
「えー、言ったじゃん」
「あ、そっか。悪い」
茶色い髪の女子を目で追うだけで精一杯の私に向かって、数メートル先で「ごめん」と口パクして左手を上げる内藤くんは下駄箱の影に消えていった。どうしたって気まずい空気が流れる中、生徒会長は小さな声で沈黙を破った。
「安い香水だな」
「え?」
「さて。帰るか」
そう言うと生徒会長は3年生の下駄箱から自分の靴を取り出し、上履きから履き替えた。そして、トントンとつま先を地面に当てながら「帰らないのか?…この学校、出るぞ」と、軽い冗談みたいに言ってみせた。
私は脅されたように靴を履き替え、生徒会長の後ろを歩いた。沈んだ気持ちを表すかのように外は赤から紫へと変わっていった。
「さっきの質問の答えは…また今度話そう」
私の心を気遣った生徒会長の優しい言葉に、私は静かに頷いた。
 
※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません
 

| 高田 一樹 | NIIGATA BLUES ss | 01:06 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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地元新潟で演劇活動などを行う人。


峰精流剣舞道峰精館所属。
雅号は高田壱峰(いっぽう)
師範なのを良いことにやりたい放題する。

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