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第四話「留年生と写真」

私が学園生活を送る新青学園24組には留年生が一人いる。
今年の春のクラス替えで一緒になったその先輩は誰とも話すことなくいつも教室の端の席で、スマホをいじるか本を読んでいる。留年生と言う言わば『不良的なイメージ』とは随分とかけ離れた存在だけど、結局どちらにせよ話しかけづらい雰囲気をつくったままだった。
「またもっつぁん見てるの?」
腐れ縁の自称親友である千尋が私に話しかけてきた。
「もっつぁん?」
聞きなれない単語を聞き返す私は情報通の千尋に解説を求めた。
「もっつぁんって言うのは本間さんのあだ名。先輩はみんなそう呼んでるらしいよ」
「へえ。なんで?」
「ココカラハ有料ニナリマス。課金シテクダサイ」
急に機械のシステム音みたいな声を発した千尋に「じゃあいいや」とだけ返す。知らない時の常套手段なのはわかってる。
「もっつぁん、か」
本名、本間智。中肉中背で真面目な雰囲気。歳が上だからか落ち着いた空気を持っている人。金髪だとかピアスの穴が何個も空いてるだとかそういういわゆる不良的な要素はどこにも見当たらない。だからこそ、彼がこの教室にいることが不思議で仕方ない。
けれど、その不思議はまったく解消されないまま一学期の期末テストを迎えてしまった。もちろん、本間先輩とは一言も会話をすること無く。それどころかクラスメイトの誰とも一言以上の会話をした姿を見なかった。
 
そして期末テスト二日目。
前日のハンバーガーショップの一件から、千尋と上手く話せずにいた私はテストが終わってすぐに教室を出た。下駄箱から靴を取り出し、履き替えて玄関を出る。空は快晴、でも私の心には名前のつけられないモヤモヤの曇り空。
ふと右側、グラウンドの隅にうずくまってる人影が見えた。
「大丈夫ですか?」
私は体調を崩した人だと思い駆け寄って声をかけた。けれど、そうじゃなかった。そのうずくまった視線の先には一匹の犬。それをスマホで撮影してるだけだった。
「見て。上手く撮れたと思わない?」
その画面を見るより先にその声の主が本間先輩だったことに驚きを隠せなかった。まさか、約3ヶ月もの間同じクラスにいながら話したことない人との第一声がこれだなんて。先輩はいいのだろうか。
「あ、かわいい」
その感情が私のモヤモヤと驚きを一瞬で解消してしまった。写真に映った真っ白な犬は舌を出して、ウインクしたまま笑っているように見えた。
「でしょ。あとこれも」
そう言って猫の写真を見せてくれた。景色から察するに学校の近所だと思う。
「本間先輩は動物が好きなんですか?」
「動物って言うより写真が好きなんだ」
「へえ。だからこんなに素敵な写真が撮れるんですね」
普段、千尋と話してるみたいに言葉がすらすらと出てきた。数分前まで3ヶ月の沈黙があったとは思えないほどに。なんて言うか、心地が良い。
「ごめんね、教室だと話しかけづらかったでしょ?」
「え、そんなこと…」
「そういう風にしてたから。どういう理由でも俺は留年生だからね、関わってもあんまり良いことないし」
そうか。本間先輩はそういう気持ちでクラスメイトと距離をとってたんだ。そう言えば今も画面越しに話しているけど、向かい合って目を合わせているわけじゃない。そう考えているとどうしても聞きたくなってしまった。
「あの…本間先輩が留年した理由って聞いても良いですか?」
「んー…」そう言って間を取った後。
「それはまた今度で」
そう断りを入れて本間先輩は立ち上がった。視線の先にはテスト終わりの学生たちが続々と玄関から出てくる。それを見ると反対方向に歩き出していった。思わす声をかける。
「本間先輩!校門、逆ですよ!」
「こっちに抜け道があるんだ」
さらりと言い放ち、足を踏み出すかと思いきや踵を返して私の前に立った。
「あと本間先輩じゃなくて良いから」
「え?じゃあなんて呼べば…」
「もっつぁん、でいい」
それだけ言うと本間先輩…もっつぁんはまた抜け道があると言う方向に歩いて行った。私は、そこで初めてもっつぁんと目を合わせたのだと気付いた。なにを考えているかわからないようで、それでいて少し寂しそうな瞳だった。
「もっつぁん…ちょっと呼びにくい」
そう独り言を呟くと足元の犬が「ワン!」と相槌をうった。その仕草が可愛くてスマホを取り出し、写真を撮った。
 
テスト二日目の午後。
私は野良猫や野良犬を探しながらゆっくりと家に帰った。
 
※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません
 

| 高田 一樹 | NIIGATA BLUES ss | 01:07 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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地元新潟で演劇活動などを行う人。


峰精流剣舞道峰精館所属。
雅号は高田壱峰(いっぽう)
師範なのを良いことにやりたい放題する。

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