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〜 one tree of Life 〜
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〜千草の朝〜
私は眠れずに迎えた朝をいつも通り料理の仕込みから始めた。
それでもいつもより早く始めたから時間が余って、仕方ないから店の前の掃き掃除を始めることにした。…慎ちゃんの仕事なのに。
私がぶつぶつ呟きながら掃き掃除を始めようとすると箒が無いことに気付く。
慎ちゃんが持ってったんだ…なんでだろ。
−もどかしい。なにをやっても慎ちゃんのことばっかり。

私は早めに店に暖簾をかけた。
すると後ろから声をかけられた。
「なんだ、今日は早いんだな」
慎ちゃんだと思って振り返ると…岳牙さんだった。がっかりだ。それにそんな期待をした自分にイラついた。
「なんだよ、ムスッとしてよぉ。入っていいんだろ?」
「ええ、どうぞ」
岳牙さんと店に通すとまた後ろから声をかけられた。
「なんだ、今日は早いんだな」
…慎ちゃんだった。
「もう、どこ行ってたのよ」
「悪ぃ、悪ぃ。ほら」
慎ちゃんは私の気持ちなんて気にも止めずに巾着袋を渡した。
「岳牙のツケ。もらってきてやったぞ」
「おっ、悪ぃな」
「ったく、テメェで持って来いよ」
暖簾から顔を出した岳牙さんと話しながら店の中に入っていく慎ちゃん。なんかいつも通りでむかつく。
「慎ちゃん、箒は?」
「あ、壊れちまってよ」
もう…そんなんだろうとは思ったけど。っていうか箒って壊れるもんなの?
「俺、すげぇ眠いから寝るわ。おやすみ」
そういうとさっさと奥に入っていった。もういいや、帰ってきたし。起きたら忠吾さんのこと聞いてみよう。


昼過ぎになると忠吾さんが来た。いらっしゃいと声をかける私。…良かった、もういつも通りだ。
「おっ、さつきちゃんはどうした?」
岳牙さんはまだ居る。相変わらず空の瓶を目の前に置いて。
「散歩に出かけました、どうやらこの町が気に入ったみたいで」
「それは良かったです」
と、お茶を差し出す私に忠吾さんは注文を告げる。そこへ信也さんも入ってきた。やっぱり昼時はちょっと忙しい。
「なんだい、遅かったじゃねぇか」
「巡回任務中なんだよ。だから酒は飲まないからな」
「なんだと、じゃあ帰れ!」
岳牙さんは急に怒り出した。お酒が飲めないとなると態度が一変する。単純で、なんか笑える。まあまあ、となだめると店の外に伊之助さんが見えた。
「伊之助さんは昼食食べないんですか?」
扉の隣りの格子戸から声をかけると伊之助さんは「痩せようと思って」と言いながら振り返ったけど、手には団子を持っている。
「そうですか」と私は信也さんと忠吾さんの昼食を用意する。
後ろから岳牙さんの「団子食ってんじゃねぇか」というつっこみが聞こえる。

昼食を作り始めると岳牙さんは「暇だ暇だ」とつぶやき始めて、仕舞いにはお店を出て行った。「ちょっとぶらついてくらぁ」…お酒が飲めないのが相当つまらないみたいだった。

昼食を作り終えて二人に出したところで慎ちゃんが起きてきた。
もうちょっと早く起きてくれれば手伝わせたのに…間が悪い。
「おはよう、千草」
「遅いわよ。そうそう、お客さんよ」
そう言いながら私は慎ちゃんを忠吾さんの席の向かいに座らせた。
「お食事中すいません、これが慎三郎です」
「これってなんだよ」
うるさい、あんたみたいなのはこれで充分よ…と言いたくなったけど人前だから我慢、我慢。
「あなたが…」忠吾さんは箸を置いて話した。
「忠吾、ってんだろ?」慎ちゃんはぶっきらぼうに言った。どうして、名前を知ってるんだろう…やっぱり顔見知りなのかな、でも忠吾さんはそんな風じゃないし…。
「市橋から聞いてんだ」
「市橋…?」
「あ、天巌隊の隊長だよ。皆、隊長って呼んでるからあんまり知られてないけどな」
忠吾さんは、ああ、と頷いた。どうやら知っているようだった。

「貴方に相談があるのですが…」
やっと聞きたかったことが聞ける。私は失礼だと思いながらも、人の会話に聞き入った。
「私はさつきの用心棒です、が、今は敵討ちの手伝い人です」
「物騒だな…で、その殺し屋みたいな奴が俺に何の用だ?」
「これを…抜いていただきたい」
そういうと忠吾さんは刀袋に入った刀を取り出した。私は目を疑った。
白塗りの鞘に、荒い柄捲、そしてそこから発する雰囲気は妖刀【翠月】だった。
「どうしてこれがここに…」
慎ちゃんも私と同じ気持ちだったんだろう、私が口に出しそうな言葉を言った。
「この刀は妖刀です、見ればわかると思いますが」
それから忠吾さんは説明した。この町に妖刀を抜ける男が居ると言う噂を聞いたこと。それが慎ちゃんだったこと。そしてそのまま続けた。

「この刀の名前は妖刀【紅月】(くげつ)…人間にしか抜けない刀です」
慎ちゃんがそれを手に取ろうとした時、外に出ていた岳牙さんが走ってきた。
「妖怪だ!!」
奥にいた信也さんは店を飛び出した。次いで忠吾さんも席を立った。
「おい!この刀は?」
走り出そうとした忠吾さんの後ろ姿に慎ちゃんは声をかけた。
「差し上げます、私には使えませんでしたから」
そういうと忠吾さんと信也さんは店を後にして岳牙さんの後をついていった。
「慎ちゃん…どうするの?」
「どうするもなにも…」
そういうと慎ちゃんも店を出て行った。
…妖刀【紅月】を手にして。

私は店に独りになった…そして気付いた。
運命からも取り残されているのだ、と。
| 高田 一樹 | 翠月が笑ったらぶった斬れ!2(小説版) | 15:57 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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地元新潟で演劇活動などを行う人。


峰精流剣舞道峰精館所属。
雅号は高田壱峰(いっぽう)
師範なのを良いことにやりたい放題する。

殺陣教室!!
高田劇剣術道場

詳細はこちら
綺麗なお姉さんと心理学が好き。
モテたい。

twitter@sir_kz その他詳細は下のPROFILE欄でご確認ください。


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